IT技術関連のこと、読んだ本の紹介、実際に買って使ったオススメのガジェットなどなど、書いていきます。

2018/12/15

今週の読書紹介(2018/12/03~2018/12/09)『国境なき助産師が行く』


公開遅れたので 12 月第一週(2018/12/03~2018/12/09)からは次の 1 冊を紹介。


小島毬奈『国境なき助産師が行く 難民救助の活動から見えてきたこと』ちくまプリマー新書、2018. ( amazonで見る )

突撃体当たりな感じで国境なき医師団へ応募し、受かり、シリアや地中海船上やレバノンなどを渡り歩き、助産師として赤子を取り上げているという、著者の生き様自体がまずスゴイです。

ただ、それ以上にやはり、世界にはこんな凄絶な現場がまだまだたくさんある、という一端を、平易な語り口調で垣間見ることのできるという貴重な一冊。

アフリカで身売りされ、イタリアへ逃げる中で、手こぎのようなボートに定員超過状態で載せられて圧死する人、そんな中でも生き残って救助船の中で力強く子供を産む人……。子供を産める数がイコール女性の生存価値であり意義であるという世界観の中で、先進諸国の価値観でもって、どこまで「援助」の手を入れていくべきなのか。釣った魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えるべき、とは、言うは易きことで、現実に目の前に飢えている人がいたら釣った魚を与えてしまうものであるけれど、それはやはり、次も魚が与えられて当たり前であると期待されることに繋がっていってしまう。

色々と、考えさせられます。が、底抜けに明るい著者の人柄が、本書全体を通して透けて見え続けていて、悲愴なのだけれども、時におかしくも笑えてしまう。それは、上記のような凄惨な環境下で栄養が足りていないにもかかわらず、人が集まり音楽が鳴り始めると楽しく踊り出してしまうというアフリカの人たちのエピソードを通しても、同じように感じられました。

2018/12/02

今週の読書紹介(2018/11/26~2018/12/02)『人がうごくコンテンツのつくり方』『0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方』


今週(2018/11/26~2018/12/02)からは次の 2 冊を紹介。


髙瀬敦也『人がうごくコンテンツのつくり方』クロスメディア・パブリッシング、2018. ( amazonで見る )

世の中のものすべてコンテンツ、という考え方は本当にそうだと思っていて、それってそもそもの認識論、言語による分節化、道具的用法というところと軌を一にしているのですよね。段ボールミカン箱は、人によってはミカンを入れる容れ物であるけれど、人によっては勉強机である。とか、人によっては祖先を供養し拝むべき石碑だけれど、人によっては単なる路傍の石にすぎない。とか。そういう。

いかにして、ただのモノを、コンテンツに昇華することができるのか。そのメソッドのいくつかを、先に挙げたような思考を背景にして、テレビ局に在席していた著者が、紹介してくれるという一冊になります。

とりわけ「言い換え/置き換え」というのはかなり応用範囲の広く効くものだろうなと思いました。面白い例がいくつかありましたが、うち一つとしては、グレープフルーツのことを「イエローメガみかん」と言ってしまうと、途端に「何だ何だ?」と食べてみたくなってしまうような。

ビジネス展開/サービス開発をする上では、人を惹きつけるために、やはり「ネーミング」「キャッチコピー」など、ことばに頼らざるを得ません。もちろん、本書内に書かれていたように、それだけでなくて視覚的インパクト(名前は覚えてもらえなくても「あの、赤い金髪のやつが出てるCM」のようにぼんやりと覚えてもらえるための仕掛け)も必要になりますが、その先、定着させるためには、ことばの力が絶大です。そのことを改めて考えさせられました。


星﨑尚彦『0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方』KADOKAWA、2018. ( amazonで見る )

明日倒産するともわからなかったメガネスーパーを驚異的なまでに V 字回復させた現社長さんによる、立て直しの背景にある考え方紹介、という本です。

とはいえ単なる表層的な経営論が述べられているだけというわけでもなく、具体的なメソッドとしても、以下のようなものが挙げられています。


  • 「何もかもを全て腹落ちさせるまで話し合う」という 10 時間ミーティングを毎週月曜に実施
  • それを全社員が見られるように、中継 & アーカイブ公開
  • 社長自身が現場感覚を得るために、全国の店舗を渡り歩く(電話も自分で取るし、ポスティングも自分でするし)

これだけ見ると、社員愛に溢れ愚直なまでに泥臭いことをやっている昭和風な社長という印象を受けられるかもしれませんが、徹底的に数字を見ながら経営の嗅覚を養うため、そして、社員一人一人に経営者の考えを納得させるためにやっている、ということです。

また、

  • 社員の本音を聞き出すためであれば何でもする
  • 社員に動いてもらうためには「いいからやれ」でなく、腹落ちして自らが動き出すように仕向けていくしかない
ということで、むしろ次世代型経営の一端が垣間見えると思います。ここまで力を尽くしておいて、 V 字回復できたのは自分の力ではなくて、社員全員の力だと言いきれるのが、カッコイイ。

  • 他のメガネ屋と異なる差別化をするために自分達の最大の強味である「アイケア( eye care )」を謳って高品質高価格という路線に切り替えた
というのが、回復においての最大の理由であると考えられますが、これを実現するためにどれだけの現場改革がおこなわれなければならなかったことか。これを 3 ~ 4 年ちょっとでやってしまったのが凄くて、勇気づけられました。

2018/12/01

今週の読書紹介(2018/11/19~2018/11/25)『「3か月」の使い方で人生は変わる』『絶滅危惧職種図鑑 これからなくなる厳選65種』


今週(2018/11/19~2018/11/25)からは次の 2 冊を紹介。公開遅れていて既に先週のものですが……


佐々木大輔『「3か月」の使い方で人生は変わる』日本実業出版社、2018. ( amazonで見る )

freee 代表の佐々木さんの本。特別に何かスゴいものがある! というわけでもなく、基本に忠実なことがただただ書いてあるだけなのですが、その「基本に忠実であり続けること」が何よりやっぱり難しかったりするので、そこに強さがあるのだろうなと思わされました。

やらないことを決める。これなんですよね。アイディアが思い浮かんでもすぐには口に出さないで溜めておく、一方で、まずはアウトプットしてから思考してみる、という使い分け/切り替えも大事ですね。

事務的な仕事は生産的でない分、短期的な快楽がある(成果が見えやすい/仕事をしているような実感がある)から、ついつい手を出して時間を使ってしまいがちだし、いつまで経ってもなくならない、というのも、ほんと、その通りだと思います。課題なんですよねーーーー。


七里信一『絶滅危惧職種図鑑 これからなくなる厳選65種』あさ出版、2018. ( amazonで見る )

厳選しても 65 種類も出てくるくらいに、今後の技術革新や生活スタイルなどの変化によって、消えゆくお仕事がたくさんあるというご紹介。それぞれの職業につき一つ一つイラストつきです。

なくなるまでの期間については、今後数年内には、というものもあれば、まだ五十年以上は残るだろうな、というのもあります。なくなるであろう理由については、読んでいけば「そりゃそうだよね」と思えるものがほとんどですが、ソラでこれらを全部挙げていけと言われたらなかなかできることではないので、追認のためにも一通り目を通しておく価値があると感じられました。

著者プロフィールがモリモリすぎるのはちょっとご愛嬌というか……、読むとゲンナリする人は一定数以上いそうなので、あえてわざわざ読まない方が良いかもしれません。こう書くと、逆に読んでみたくなってくるかもしれませんが。