IT技術関連のこと、読んだ本の紹介、実際に買って使ったオススメのガジェットなどなど、書いていきます。

2018/09/30

今週の読書紹介(2018/09/24~2018/09/30)『マンモスを再生せよ』『コンピュータサイエンス探偵の事件簿』『誰も知らない! 20代の動かし方』


ほんと雨ばっかりだなー……と愚痴りたくもなる今週(2018/09/24~2018/09/30)からは次の 3 冊を紹介。


ベン・メズリック、上野元美訳『マンモスを再生せよ ハーバード大学遺伝子研究チームの挑戦』文藝春秋、2018. ( amazonで見る )

「未来をあきらめるのはあまりにも安直すぎる。人々は、今日不可能なことと、明日不可能なことを混同している。 ――ジョージ・M・チャーチ」 ( 本書 p.130 )

永久凍土の中に埋もれていたマンモスの遺伝子から、マンモスを生み出す。ただ、ゼロから生み出すのではない。現生のアジアゾウをマンモスにするのだ。そしてその目的の一つは、北極圏に埋蔵された事件爆弾ともいえる大量の二酸化炭素の、地球全土への拡散を防ぐこと……

こんな概要を聞いて、心躍らないひとがいるだろうか、いや、いない。

しかも本書は、『ラス・ヴェガスをブッつぶせ!』や『facebook』を生み出したノンフィクションライターのベン・メズリックの手になるもので、彼がこのテーマを手がけて、面白くないものができあがらないはずがない。彼お得意の小説仕立てからなる、章毎に主体・年代が移り変わっていく話の展開もまた見事なもので、ページをめくる手はやすやすと止めさせてはもらえなくなる。科学的な素養が少なくても、丁寧な筆致により、気づけば読む前よりも合成生物学という分野について一つ賢くなっていることだろう。

「生きたケナガマンモスを復元し、野生に放つには長い時間がかかる。おそらく今世紀の後半になるだろう。」 ( 本書 あとがき p.286 )

その日が来て、実際にこの目で絶滅動物の復活を目にしたいものである。



Jeremy Kubica、鈴木幸敏訳『コンピュータサイエンス探偵の事件簿 データ構造と探索アルゴリズムが導く真実』オライリー・ジャパン、2018. ( amazonで見る )

魔術師が跋扈する架空の世界において、ミステリィ小説仕立てでアルゴリズムとは何ぞやということが語られていく一冊。

ミステリィとしての出来はともかくとして(笑) ストーリー中に各アルゴリズムを組み込んで構成していく手腕は見事なものです。正直、手っ取り早くアルゴリズムを勉強したいという場合には、他の本を手に取る方がよいわけですが、堅苦しいことはよくわからないけれどアルゴリズムというものがどういう時に使われるものなのか、というのを楽しく知りたいのであればオススメできます。

「「アルゴリズムを知らないんだったら、単にそう聞けばいい。アルゴリズムを知ったつもりになるのは大事故のもとだぞ。間違った探索をして、足をすくわれた新人をこれまでも大勢見てきた。君みたいに優秀なやつであっても、だ」」( 本書 p.87 )

なお、コンピュータのことを少しでもかじってると、各地名・人名がニヤリとできて面白いです。Usbポートとか、イテレータ教授とか……


若山雄太『誰も知らない! 20代の動かし方 現代の若者に言うべきこと、言ってはいけないこと』きずな出版、2018. ( amazonで見る )

「誰も知らない」とは、かなり過大な宣伝文句に感じられました。

「20代」と一般化されているものについても、「それはむしろ10代のことでは?」とか、「いや30代以上でも普通に……」とかいうのが、揚げ足とりのレベルでないくらいに目に付きます。

ターゲットを絞るとよい、というのは、マーケティングの王道戦術ではあるのですが、ここはもうちょっと広く「若者」くらいに取ってしまったら、もっと適切だったのかなと。内容自体は、30代までの人が読んでもあまり実りあるものはないかもしれませんが、40代以上とか、かなりジェネレーションギャップが出てきそうかなーと思えそうな方々だと、目から鱗の内容も見られるかも。

それでも、ネット記事とさほど大差ないかなーという印象は拭えません。ただ、若手マネジメントにものすごく困っている人であれば、良い処方箋になりそうです。

2018/09/25

今週の読書紹介(2018/09/17~2018/09/23)『時をあやつる遺伝子』『世界一変な火山』


豪雨激しい今週(2018/09/17~2018/09/23)からは次の 2 冊を紹介。

松本顕『時をあやつる遺伝子』岩波科学ライブラリー、2018. ( amazon で見る )

「時をあやつる遺伝子」って、めっちゃ厨二心を揺さぶられるフレーズですよね。時計遺伝子 ( clock gene ) のことなのですが、ものは云いよう。

さて、本書は時計遺伝子の解説書……というよりかは、時計遺伝子研究史です! 一般書でここまで同時代研究者としての観点もまじえた研究史、それでいてコンパクトに語られているというのは珍しいです。以下、引用します。

「時計遺伝子の研究史をたどりながら、そこで繰り広げられた激しい競争も描くことなら、それを傍で見守り、ときに当事者となり、そしてみごとな負けっぷりを晒してきた私にこそ伝えられる内容に思えた。競争は、ある意味で研究のダークサイド。しかしそれは時計遺伝子研究の発展と不可分だった。この本に、岩波科学ライブラリーの他の書籍とは毛色の違う、少しハードでスリリングな翳りがあるとしたら、そんなところに理由があるかもしれない。」( 本書 p.130 )


山本睦徳『世界一変な火山 知床硫黄山ひとり探査記』サンライズ出版、2018. ( amazon で見る )

「山腹から大量の硫黄がどろどろと流れる、そんな火山は知床硫黄山以外に世界のどこにもない。」 ( 本書 p.180 )

そんな知床硫黄山との出会いから、外国語学部卒という生粋の火山研究シロウトな科学ライターの著者がついには世界的に有名な Journal of Volcanology and Geothermal Research という科学雑誌に論文を発表するに至るまでを、そしてそのちょっと先のお話までを描いた、壮大な、でも至って個人的な、知床硫黄山愛に溢れる一冊。

数千円~数万円程度の研究道具でも、情熱×ニッチな分野という掛け合わせでここまでの成果を出せるという稀有な例です。別にお金をかけないことが美徳であるというつもりはありませんが。何事も、気軽に始めてみるに越したことはないですね。

全ページフルカラーで、写真たっぷり。ついつい、知床に足を運んでしまいたくなることでしょう。もし知床硫黄山に行く場合は十分にお気をつけください。著者も、本気で何度も死にかけていて、本当に、運が良かったというほかないくらいのエピソードが披露されています。

2018/09/17

今週の読書紹介(2018/09/10~2018/09/16)『フランス女子の東京銭湯めぐり』『ホーキング、最後に語る』『世界の路地裏を歩いて見つけた「憧れのニッポン」』


急に秋めいた気候になってきたと思ったら、また夏日が戻ってきたりという、寒暖差激しい今週(2018/09/10~2018/09/16)からは次の 3 冊を紹介。


ステファニー・コロイン『フランス女子の東京銭湯めぐり』GB、2018. ( amazon で見る)

最近、銭湯がますます好きになってまして、何かよい穴場ないかなーと思って手にしてみた一冊。穴場が見つかったわけではありませんが(人気のところばかり!)しかし何とも魅力的なところ揃い。熱々の江戸っ子風呂、さらりとした地下水の透明湯~東京ならではの天然黒湯、 1 万冊以上の漫画読み放題の休憩所つき、女子向けのファンタジックな内装などなど……

銭湯って、行ってみると「あとちょっと広かったら」とか「あとちょっと休憩場所があったら」とかそういうのがあるし、WEB サイトが必ずしも充実していて写真豊富というわけでもないので、こういう本で下調べをするのも良いですね。

あ、フランス女子の入浴写真があるわけではありません、悪しからず。


スティーブン・W・ホーキング/トーマス・ハートッホ/佐藤勝彦/白水徹也、松井信彦訳『ホーキング、最後に語る 多宇宙をめぐる博士のメッセージ』早川書房、2018. ( amazon で見る)

未公開論文とかがない限りは、ホーキング最後の論文ですね。寂しいですね。「最後に語る」とあるのですが、インタビュー形式ではなく、最終論文である「永久インフレーションからの滑らかな離脱?」が収められているだけですので、いつものホーキングによる一般向けの優しい語り口のものではまったくありません。論文については至って難易度高く、専門で理論物理やっていない限りは、その手前に掲載されている解説を見ないと要旨以外サッパリ分からないかと思います。

最終論文以外であるところの、佐藤勝彦によるホーキング略伝と、白水徹也による最終論文に至るまでの足跡を込んだ解説文と、そして、最終論文の共著者であるハートッホのインタビューとは、比較すると平易なので、ページ数も少ないことも手伝って、ホーキング入門の一冊としても手堅いものに仕上がっているように感じられました。

宇宙が永久にインフレーションしていく、というのは、わりかし人口に膾炙した見方となっていると思うのですが、ホーキング=ハートッホ説によると、そういうわけにはいかないということらしいです。

さて、アインシュタイン以来の理論物理学者と云われたホーキング亡き今、量子重力理論の未来はどこにあるのか。ホーキングが育ててきたたくさんの若い芽が花開くのか。今後とも楽しみな分野です。


早坂隆『世界の路地裏を歩いて見つけた「憧れのニッポン」』PHP新書、2018. ( amazon で見る)

著者が若い頃( 2000年前後 )に歩いて回った東欧~中東、それから、最近特に専門的に取り扱っている戦時中日本に関わる東~東南アジア地域について、ルーマニアのマンホールの中をはじめ、戦時中のイラク、内戦前のシリア、太平洋戦争の爪痕残るサイパンなど、あちらこちらにある「日本人の知らない現地人の見る日本」を書き残してくれています。

迂闊にも最近よくある「ニッポンスゲー礼賛」な感じでは全くありません。タイトルからして「ニッポン」という、何というか、何だろう、となる曰くありげな表現を使って煽っている感があるあたり、著者の意図せざる編集者の勝手なるものが覗き見えてしまいます。が、それで敬遠するには、ちと勿体ないような事柄が並んでいます。先にも挙げたようなルーマニアのマンホールの中で「日本に行って働きたい」とつぶやく少年も、まだ戦争の激しくなかったイラクにおいて「日本人なのにグレンダイザーを見てないのかよ!?」とつっこんでくる青年も、まだこの同じ第三惑星地球において息をしているんだろうか、と想いを馳せてしまうくらいには得るものがあります。

やはりというか、東欧~中欧についての章と、東~東南アジアエリアについての章とでは、本人の意識ないところで熱量が違うように感じられました。後者についてがやはり「近い」からなのでしょうね。私はどちらかというと前者の方が読んでいて興が乗ったのですが、それでも、杉原千畝ばかりでなく樋口季一郎について、忘れてはならない! という著者からのメッセージは重く受け止められました。

2018/09/11

今週の読書紹介(2018/09/03~2018/09/09)『とんでもない死に方の科学』『外国語を話せるようになるしくみ』『あたらしくておいしい 日本茶レシピ』


ちょっと公開遅れましたが今週(2018/09/03~2018/09/09)からは次の 3 冊を紹介。


コーディー・キャシディー/ポール・ドハティー、梶山あゆみ訳『とんでもない死に方の科学 もし●●したら、あなたはこう死ぬ』河出書房新社、2018. ( amazon で見る)

『もし●●したら、あなたはこう死ぬ』! ショッキングな書名ですね。でも、こういうタイトルほど、人は惹かれるものです。どうして人はさほどに死に魅入られるのでしょう。でも、ここではその理由 ( why ) にまでは立ち入りません。どのようにして ( how ) 死ぬかに立ち入ります。

あなたがこの本を手にしたとしましょう。目次を開いてみたら、もはやページをめくる指が止まらなくなるはずです。そこには、次のような項目が並んでいます。


  • 旅客機に乗っていて窓が割れたら
  • 乗っているエレベーターのケーブルが切れたら
  • 雷に打たれたら

コワイですね。どれも起こりそうな事故です。そうなってしまった時のために用心してこの本を読んで対策をとっておくとよいでしょう。

さて、他の項目はどんなものが? 見てみましょう。

  • 世界一音の大きいヘッドフォンをつけたら
  • 宇宙空間からスカイダイビングしたら
  • 世界一有毒な物質を口に入れたら

何だかありそうななさそうなことが並んでいます。どうなるんだろう? 気になりますよね。

全部で 45 項目も死に方のシチュエーションが並べ立てられている何とも不謹慎なこの本は、もっともっととんでもない荒唐無稽なものも科学的に、徹底的に科学的に語られています。「スティーヴン・キングとスティーヴン・ホーキングを足して二で割った」(p.10)とは、何とも当を得た紹介文です! さあ、他の項目にも目を向けてみましょうか。

  • 粒子加速器に手を突っこんだら
  • 休暇を取って金星に行ったら
  • 「プリングルス」の工場見学をしていて機械の中に落ちたら
  • ただひたすらベッドに寝ていたら

どうですか、もう、この本を読みたくなって、いてもたってもいられなくなってはいないでしょうか? 最後に、極めつけとも言える項目は、次のものです。

「読書中にいきなりこの本がブラックホールになったら」

さあ、ブラックホールにならないことを祈りながら、本書を手に取ってみましょう。(ちょっとした文体模写で本書の語り口調風に紹介してみました。バチが当たって死にませんように!)


門田修平『外国語を話せるようになるしくみ』サイエンス・アイ新書、2018. ( amazon で見る)

シャドーイングがいかに外国語習得に効果があるかということを、これまでの学術的研究成果をもとに説いていく一冊。いわゆる軽薄な「オレオレメソッド」的なものが紹介されているのではなく、脳科学における臨床試験の成果を中心に、言語習得の道筋が丁寧に語られます。

シャドーイングは、インプット音声を聞いたそばからすぐにアウトプット発声していくというもので、言語習得における次の四サイクルをすべて満たすものとされます。

  • インプット処理
  • プラクティス
  • アウトプット産出
  • モニタリング

まずは 100 万語のシャドーイングを目指してみましょう、ということで、少しやってみようかな……


本間節子『あたらしくておいしい 日本茶レシピ』世界文化社、2018. ( amazon で見る)

日本茶のレシピって……単に飲むだけでは? などと思うことなかれ。飲み方にも色々あります。

開いた後の茶葉に炭酸水を入れるとか、ハーブを浮かべるとか、凍らせるとかは序の口。

ゼリーにしたり、佃煮にしたり、ちぢみにしたり、果てはリゾットまで。「そういうのもあるのか!」と某孤独な人のようになることでしょう。

というかまず、この表紙がたいへんステキですよね。

2018/09/02

今週の読書紹介(2018/08/27~2018/09/02)『アニメビジネス完全ガイド』『病気を治したいなら肝臓をもみなさい』


今週(2018/08/27~2018/09/02)からは次の2冊を紹介。


増田弘道『アニメビジネス完全ガイド 製作委員会は悪なのか?』星海社新書、2018. ( amazon で見る)

製作委員会は悪なのか? と訊かれても、まず、製作委員会って何? という話ですし、そもそも製作と制作の違いとは? というところからですよね。

というわけで、この表題が挙がるまでには、アニメ業界のこれまでの経緯や現状について、データに次ぐデータで明らかにしていき(=衰退している日本産業の中で伸び続けているというデータ)、そして制作、製作、流通という3つがいかにして分業してアニメビジネスを支えているか(ここでは簡単に、制作=クリエイト/製作=プロデュースとだけ)、またそれぞれの中でどんな職種があるか、という細かい説明が経られます。

製作委員会とは簡単にいってしまえばその作品に対する出資者の集まり、というもので、日本のアニメ業界独自に発展してきています。著者による結論は、決して悪と断ずることができるものではない、ということなのですが、その理由付けの詳細が気になる方は本書本文をご参照ということで。

それにしても、構成としてとても良い本だったので、『音楽教育ビジネス完全ガイド』とか誰か書いてくれないものかな。定年過ぎたくらいの会社に縛られないようなポジション取れている人が理想的なんですよね、こういうのは。


高林孝光『病気を治したいなら肝臓をもみなさい』マキノ出版、2018. ( amazon で見る)

まず、肝臓をもむ、という発想がないですよね、普通は。健康な人でも病気の人でも、肝臓が簡単に触れられる位置にある、という認識にないと思います。そう、触れるんですね、いとも簡単に。右側の肋骨の下あたりにあります。

肝臓がいかに人体の中でワイルドカードな働きをしてくれるかについては、たくさんの他の本でも語られていることですが(やってくれること、その数実に、500種類以上)、何はともあれ有名で重要なことは「解毒」ですね。その解毒作用を主とした活動を活性化するには、肝臓に休んでもらう食生活を送るのが一番ですが、それに加えて、揉むと良いですよ、というのが本書の趣旨です。

揉むといっても、いきなりお腹をにぎにぎしてはいけません。本当に皮膚のすぐ下にあるので、迂闊に強く触ると傷ついてしまいます。ボクサーがお腹を守るのは、胃と肝臓への直撃を防ぐためで、もしマトモにブローを受けると立ち上がれなくなるようですね。肝臓の揉み方は、軽く撫でる→撫で回す→上から少しだけポンピングしてあげる、くらいだそうです。これを1日おきにおこなう。もう少し詳しいやり方が気になるようでしたら、本書をご覧ください。